伝統工法と聞くと、古臭く感じたり「神社仏閣?」といったイメージが浮かぶと思いますが、高度成長期以前の民家や住宅はこの工法で建てられており、大変歴史のある古くから伝わる工法です。
昔の工人達が山から伐り出した木を用いて、その木の性能を最大限にひきだし、極力無理なく自然の中で(雨水、風雪、地震等)永く丈夫に建ち続けさせるために、試行錯誤、紆余曲折の末、あみだされたものです。
弟子に入り親方から教わった継ぎ手ひとつにしても、実に合理的で理にかなったもので、今でもその形状に新たな意味を発見したり、気付くことがあります。
伝統工法は基本的には、地震に対して建物全体を剛構造で固める現代の工法と違い、揺れに対しその力を逃がす柔構造となります。
柱を石場と呼ばれる礎石(独立基礎)の上に立て、足元土台、貫、胴差しで通し柱を組み繋げてゆきます。地面と固定されていないところが、現代の土台を布基礎にアンカーボルトで固定する工法との大きな違いです。
揺れる電車の中で四つん這いになり、床に手足が固定されているか、いないかの違いと言えばわかりやすいでしょうか。
「頑丈な剛構造の方が良いのでは?」と思われるかもしれませんが、遊びがないため木の耐力を超える力が加わった時破壊がおきます。一方、柔構造は木の耐力、特性を考慮し適度な固めと遊びをもたせ、ダイレクトにかかる力を逃すため破壊がおきにくくなります。
変形角であらわすと、剛構造
の場合1/30 の変形で倒壊に至り、柔構造の場合1/6の変形で倒壊に至ったというデータもあります。
いずれも建物の規模、形状等が違うため一概に結論付けることは出来ませんが、木を用いて建築物を建てる方法としては、今まで見た数々の現場(新築、リフォーム、解体)から考察するところ、伝統構法は最も理想的な木造建築工法だと感じております。
建築金物(ボルト等)を使用せず古来からの込み栓等による木組みの構造。
適材適所で臨機応変。その箇所に於いて最も丈夫になる細工を施します。
古建築、古民家等のリフォームに於いて気をつけなければならないのは、
基本的に柔構造の建物なので補強の壁なりを設ける場合コンパネや筋交違いによる剛の壁にしないこと。
全体が柔のところに一部、剛の耐力壁があることによって地震の際
偏心がおこり破壊を招きやすくします。
このリフォーム物件、風呂場の改造でしたが
土台から柱の胴体部分まで傷んでいたため撤去した壁を再築する際
既存の建物に沿って貫を使用した柔の壁としました。
営業地域
高山市 丹生川町 飛騨全域