道具屋にて。

窓枠を固定するための金物を買いに古川の金物屋へ行ったところ、

赤樫台の鉋が数丁。

 

廃業した道具屋の売れ残りを問屋が置いていったとか。

 

こういった手道具を扱う店はもう殆ど無く、この店のようにコアな客が寄る店でないと売れないと知って
問屋も置いてゆくのだという。

うちに連れてきてしまった・・・。

 

窓枠の固定金物買いに来ただけなのに・・・。

 

余裕などないのに・・・。

20年くらい前に作られたものとか。

 

銘は秀政。聞いたことありませんが、こういった刃物は寝かせると金属の組織が落ち着いて

良いのだとか。

 

鉋を使う仕事など殆ど無い昨今ではありますが、今でも休日には研いでみたりしています。

刃物を研ぐことを覚えたものは、研ぐことで気持ちが落ち着いたりするところがあります。

砥石によって刃物との相性が違ったり、研ぎ方によっても違ったり。

「研ぎ一生」という言葉があるくらいで、奥の深い世界です。

 

昨年高山で開催された削ろう会ではなんと1ミクロンの鉋屑を出した選手がいました。

切れる手鉋で仕上げた木の表面は鏡のように光ってとても美しく、手触りもなんともいえないものがあります。

 

良い仕事をする大工といってもらえるようになりたくて、刃物を切らすところ(研ぎ)から始まって、

構造、間取り、家相、断熱、耐震、免震、自然素材、環境負荷、そして木組み。

 

人様の家を建てさせて頂く仕事に携わる者としてはや25年。

いろいろな現場を見、触ってきましたが、今では手道具など無くても建つ家が殆ど。

 

でも腰鑿(こしのみ)一丁、切らせなくては仕事になりません。

やはり大工の基本なのです、刃物を研いで切らせることは。

 

だからこんなもの見せられると、つい欲しくなって、

うちに連れてきちゃったりしてしまうのです。

 

「これが最後の鉋となりますように!」

 

 というか、この鉋使いきってまた次の鉋が必要になるような状況を期待しますっ!